アラキモチプロジェクトは棚田保全と種の存続にあった。そして我々消費者がアラキモチ生産者と一緒に、時間と空間を共にしながら一つの種にまつわる様々な事柄や生産者の思いを知り、考えることを目的としている。3月から活動してきた一連の作業の中で生産者の思いの一端を知り、消費者の大きなわがままを知った。土日しか成山に行けない我々は、自然とさからった行動をし、地元の方に迷惑もかけた。水不足に悩まされたがなんとか一枚の田に水を張ることができた。棚田を守ると言いながら地元の方に迷惑をかけてはいけない。
そして6月9日「手で植える」という歴史ある農耕民族の原点に返って、若者や生産者が集まり、それぞれの世代が、「手植えの田植え」を1枚の棚田で行った。こんな山のてっぺんに総勢42人集まった。種を守るということを我々消費者が行動に起こすことは難しい。そんな中で42人の参加者があったということは本当に喜ばしいことだった。おいしいものをいただくのが容易い時代になり、いただく前の作り手の現場に触れる機会というのはどんどん少なくなっている。
うれしく、楽しく「田植え」をする我々に飛び込んでくる地主の近藤さんの言葉。
「わたしらぁが若い頃はねえ、朝ぼし夜ぼしゆうてねえ、夕方は星が見えるまで、朝は星が見えるうちから働いたの」
そんな近藤さんの熱いセリフを聞きながら、老いも若きも一同に介して「田植え」を行った。
初めて会う顔と顔。しかし目的は同じ。そして終わったあとの達成感も皆同じ。だからこそ労働のあとの皆でいただく食事は美味しい。 (広報・交流部 上田 里有)